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06すべりの科学床のすべりと摩擦1床のすべりを考えるとき、最初に思い浮かぶのが摩擦現象です。床とはきもの、あるいは素足の接触面の摩擦係数が適当なら、すべりは避けられるはずだと。物理学では、ふたつの物体間における摩擦の法則が成立しています。ここで注意する点は、その法則は、理想的な物体、理想的な状況 すなわち表面がかぎりなく平滑で、外からの力によって変形しない理想的な物体、湿気、ほこりなどがまったくない状況において成立するということです。ところが床のすべりの研究は、この理想条すべりの感覚を尺度化する2私たちはふだん、無意識に歩いたり、走ったり、場所によって歩きかたを変えたりしています。思いがけず「すべる」と感じるのはどういうときでしょうか。歩くというのは、かかとが床面につき、小指、親指のつけ根に重心が移り、最後に親指で床面を蹴って前に進むという運動です。このとき垂直にかかる力と水平にかかる力が働きます。こうした荷重や、足の動きとの対応を考えて、すべりの感覚を把握します。すべるという感覚は個人的なものですが、さまざまな実験結果から、日常生活において、すべりやすい床は、大多数の人がすべりやすいと感じること、また運動競技選手があるひとつの床のすべり具合に対する感じかたに共通点があることなどがわかりました。これは、床のすべりに対する人間の感覚を、すべりの程度を表現する尺度に置き換えることができるということです。件とは対極にあります。実際の生活では、すべりに影響をおよぼす要因は、次のようにさまざまです。●床材の材質や凹凸●床表面に付着している水分、油、土砂、ほこりなど●はきものの種類、底の材質や形状●動作の種類やその程度●動作する人物の運動特性現代の多種多彩な床材、多様なはきものの形と材質…これらがさまざまに組み合わさっておこりうるすべりの研究が当社の課題であり、安全で快適な生活環境をつくる基礎となります。すべり感覚を客観的につかむ「すべる∼すべらない」という感覚は、人が共通して感じるものであることが、多くの実験で明らかになりました。このすべり感を程度によって数値で表わす感覚尺度が、床面の研究に役立っています。人が歩くときの荷重の変化の様子と、その際の床とくつ底との接触状況。左から、歩行、ダッシュ、ストップの場合。
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07すべりが問題となる環境は?3LIXILでは、人が歩く環境を次のようにわけています。❖くつをはく領域●都市部の公共エクステリアやマンション、エントランスなどまわりに土や砂が少なく、雨がかりする領域●周囲の環境に土や砂が多く、床にも土や砂がもちこまれる、雨がかりする領域●地下街、ビルの内部など、雨がかりしない領域❖素足の領域●住宅の浴室など、水濡れした面を素足で歩行する領域●プールサイドなど、水濡れした面を素足で走ることもある領域こうしたさまざまな使用環境に対して、異なる床材、はきものの種類、動作、介在物などを設定して歩行試験を行い、そのデータの集積によってすべり感覚尺度が構成されます。官能検査によるすべり感の定量化4人間が実際にある設定条件を歩いて、そのすべり感を調査することを官能試験といいます。さまざまな種類の床材に対し、はきものや動作を変えてそのすべり感の表現を5段階であらわし、感覚尺度を構成します。2……非常にすべらない1……やや すべらない0……どちらともいえない−1……やや すべる−2……非常にすべるふつうは、床面の凹凸が大きいもののほうがすべりにくいと思いがちですが、こうした尺度を利用すると、環境によっては、表面がこまかいほうがすべりにくいということがわかり、床材表面の粗さの研究に役立っています。タイル表面の電子顕微鏡写真。左の写真内の図は、屋外路面の材料表面モデル。右の写真内の図は、浴室床などの材料表面モデル。舗装材は、植栽などとコーディネートして、安全で快適な環境をつくる。
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