左ページから抽出された内容
04すべりの研究PortablePullSlipMeter)です。このONO・PPSMで測定されるすべり抵抗係数C.S.R’は、O-Y・PSMで測定されるC.S.Rとほぼ一致することが確認されています。つぎは、床材の摩耗によるすべりの変化を短時間で再現できる摩耗促進試験機の開発です。先にも述べた通り、床のすべりは、その床の供用期間中に歩行などの負荷による摩耗により変化する可能性がありますが、その変化の傾向は床材によりまちまちで、なかなか予測できません。小野先生らは、歩行動作の中の着地時のかかとのこすれ現象がすべりを変化させる摩耗の原因であることをつきとめ、この現象を置換した摩耗促進試験機を開発しました。手元にバージンの試験体しかなくても、この試験機で負荷を与えることにより、歩行によるすべり抵抗の変化を再現できることが実験室実験により明らかになっています。この他、近年、人間の幸せにとってかけがえのないパートナーとなっているペットの安全性からみたすべりの評価方法に関する研究なども、行っています。◉すべりに関する今後の課題は何ですか?課題としては、設計段階における床材の耐用年数の把握や、長期的な改修計画の立案に必要不可欠な、個々の建築物の使用状況に応じたすべり抵抗の変化の予測方法の確立が挙げられます。先にも述べた通り、摩耗によるすべり抵抗の変化を再現できる摩耗促進試験機は開発されていますが、あくまでも実験室実験の段階で、実際の建築物床への適用性は、まだ十分に検討されていません。そこで、我々の研究グループでは、駅や商業施設など、通行者数が概略把握できている実在建築物床を対象に、供用期間中のC.S.Rの変化を長期にわたって測定し、この結果と摩耗促進試験機でのC.S.Rの変化とを比較することにより、摩耗促進試験機の負荷が何人の通行者数に該当するのかを明らかにするための研究を鋭意進めており、成果の一部はすでに学術論文として発表されています。◉その他、床以外にも取り組まれている研究はありますか?すべりに対する安全性確保には、床以外の部位の性能も影響します。特に、立ち上がりなど足腰への負担の大きい動作の遂行や、歩行などの動作中のバランスの確保、さらには万が一すべった時の転倒防止には、手の利用が有効と思われます。手の利用は、幼児や高齢者、あるいは身体が不自由な方などにとっては必要不可欠な補助であるわけですが、仮に手すりを握ったり壁に手をついたりした時に手がすべってしまったとすると、まるで最後の命綱を切られたような状況にもなりかねません。このような観点から、我々の研究グループでは、手と手すり、壁などとのすべりの評価方法を提案しています。将来は、床、手すり、壁など、人間が触れる可能性のある部位、部材全体で総合的に安全性を担保するシステムを構築したいと考えています。◉これからの床材の理想の姿は?価格も含め全ての性能に優れた床材は理想ですが、現在の技術では実現不可能です。また、床材に要求する性能は使用者一人一人異なります。強いて言えば、種々異なる要求性能に的確に対応できるシステムを備えた床材が、理想の床材ということになるかもしれません。ユニバーサルデザインの観点からは、社会的にコンセンサスが得られている最低限の水準(ミニマム・リクワイアメント)を確保したうえで、必要な時間、必要な空間において、身体的弱者などを含む個々の使用者の要求にさりげなく対応できるシステムを備えることが、理想的な床材の1つのあり方といえるのではないでしょうか。◉O-Y・PSMの試験・評価方法が利用されている例を教えてください。O-Y・PSMの試験・評価方法は、日本建築学会床工事WGにより、学術的に妥当性が証明された性能評価方法として選定されていま
右ページから抽出された内容
05す。また、日本工業規格では、「JISA1454高分子系張り床材試験方法」、および「JISA1509-12セラミックタイル試験方法」に採用されています。さらに、日本塗り床工業会制定の「塗り床のすべり試験方法」にも、採用されています。具体的な指針、規準などとしては、上述の床工事WGからC.S.Rの推奨値(2015年11月建築学会で推奨値になった)が提案されている他、国土交通省の「高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準」や、東京都の「福祉のまちづくり条例施設整備マニュアル」、文教施設協会の「学校用弾性舗装材性能規準」において、規準値あるいは推奨範囲などが提示されています。この他、私的なものでは、ディベロッパーや鉄道会社など多数の会社が、それぞれ独自の規格を設けています。石材や木質系床材、カーペット、畳などでも、C.S.Rが幅広く活用されています。このように、我が国では、ありとあらゆる床のすべりの評価に、C.S.Rが用いられているのが現状です。仮に他の方法ですべりを評価し、C.S.Rを測定していなかったり、あるいは測定していても悪い評価のものをそのまま使用したりしていたとすると、何か問題が発生した時に、おそらく責任を免れることはできないと考えられます。◉タイルの改訂JISに測定条件が例示されています。これに対して、先生の感想をお聞かせください。タイルや他の材料を含む種々の床材の中から、使用者の要求水準に見合ったものを合理的に開発、選択するためには、各床材をその種類のいかんに関わらず同一の物差しで比較できるよう、共通の条件で性能を測定する必要があります。そのような意味で、タイルの改訂JISでは、他の多くの床材で適用されている高分子系張り床材のJISと同様の測定条件が例として示されており、使用者にとって大変望ましいことと高く評価できます。もちろん、JISに示された測定条件はあくまでも例であり、個々の床材を具体的に評価する際には、実際の使用状況などを想定して測定条件を設定するのが基本的スタンスとなります。その中で、雨水がかりを想定した測定条件が例に示されていることは、このような条件でのすべりがタイルにおける重要な性能の1つと位置付けられたことを意味しており、注目に値すると思います。最近は、街並や景観のベースとして歩道の意匠も進んでいるが、こどもから高齢者までみんなが安心して歩けるような安全な床材の開発が重要な課題である。

お探しのページは「カタログビュー」でごらんいただけます。カタログビューではweb上でパラパラめくりながらカタログをごらんになれます。