パッシブファースト早わかりBOOK 19-20(20-21)

概要

  1. 基礎講座 パッシブファーストの住まいづくり(実践編)
  2. 株式会社 近藤建設興業さま
  1. 20
  2. 19

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20|『LIXILメンバーズ通信』2017年3月号掲載 (記事中の社名、部署名などは当時のものです)「室温で語る家づくり」ができる工務店が選ばれる時代に住まいと環境社代表 一般社団法人パッシブデザイン協議会 代表理事野池政宏さまパッシブデザインが非常に注目されています。とくに「お客さまにいい家を提供したい」と考える工務店や設計事務所が注目し、私が開催している勉強会にも積極的に参加するようになっています。おそらくそれは私の周りだけで起きている現象ではないと思います。そして一昨年頃から「パッシブデザイン」で検索し、つくり手を探す住宅取得者が現れてきました。でもそれは当然のことで、住宅取得者の多くが「最小限のエネルギーで(光熱費で)、冬暖かく、夏涼しく、明るい住まいが欲しい」と考えているからです。ホームページなどで「そうしたことを実現できるのがパッシブデザインというものだ」と丁寧に説明できるつくり手が増え、それを見れば「パッシブデザインの家が欲しい」と考えるのは当たり前でしょう。またここ最近で大きく変わったのが「室温や光熱費をシミュレーションできるツール」が登場してきたことです。それによってパッシブデザインの効果を具体的な数字で示すことができるようになりました。これまでは「断熱すると暖かくなるよ。暖房費も少なくて済むよ」という程度の説明しかできなかったのに、こうしたツールによって「これくらい断熱すると、これくらい暖かくなるよ。これくらい暖房費が安くなるよ」と言えるようになってきたわけです。こうした定量化ができるようになった進化は非常に大きいと思います。「断熱の時代」から「パッシブの時代」へと進化ここ数年は「断熱の時代」と言ってよいでしょう。例えば国も省エネ基準の義務化を進め、ZEHでもUA値の基準を設けています。私の周りのつくり手もどんどん断熱性能を高めています。でも、住まい手は「冬暖かい」だけを求めているわけではありません。先に書いたように「夏涼しく、明るく」といったことも同時に求めています。これらをすべて実現させようとするのがパッシブデザインです。いわゆる高断熱住宅よりもパッシブデザイン住宅のほうが上位の概念であり、日本の住宅における進化の過程でパッシブデザインに進むのはやはり当然のことでしょう。そう考えれば、早くパッシブデザインに取り組むべきです。とくにここ1年ほどはZEHが焦点になっていますが、よく考えてみればお客さまがZEHを建てたいと考える大きな理由は見当たりません。ZEHにしなくても十分に光熱費が安い家であればそれでOKでしょう。もちろん逆に補助金をもらわない理由もないし、「ZEHが建てられる会社であること」は一定期間アピールになるでしょうから、ZEHが建てられる態勢にしておきZEHビルダー登録をしておくというのは意味があります。しかしZEHに積極的に向かおうとするなら、パッシブデザインをしっかり組み込んだ「パッシブZEH」に向かうのがどう考えても正解だと思います。お客さまが求めているのは実際に得られる暮らし像お客さまが欲しいのは、例えば断熱仕様ではありません。まだまだ「当社はこんな断熱材を使っています。こんな断熱工法を採用しています」というアピールをする会社も多いですが、近い将来ほとんどのお客さまが「断熱材の種類や工法で暖かさが決まるわけではない」ということに気が付いてくることは間違いありません。自分たちが欲しいのは暖かさや涼しさ、つまり「実際に得られる暮らし」だと気が付いてくるということです。そう考えれば、少なくとも冬はどれくらいの室温になるか、夏はどうかということを示すことができる会社が選ばれるようになります。つまり「室温で語る家づくり」ができる会社が選ばれるようになっていくわけです。私の周りではすでにそうした現象が起きています。だからシミュレーションツールが重要になってくるわけですが、それよりも重要なのが「実際の室温がどうなっているか」ということです。実際に建てた家の室温を示すことができれば何より信頼が得られることは容易に想像できるでしょう。シミュレーションツールを使って「これくらいの室温になるはず」と提示し、さらに「実際にもこうなっている」ということを示す。さらに住まい手の感想を紹介する。こうしたアピールができる会社が選ばれるのは当然です。パッシブデザインの勉強は楽しいモヤモヤが「なるほど!!」にでは、どうすればパッシブデザイン力を身に着けることができるか。どうすればシミュレーションツールを使いこなし、的確に実際の温度実測などができるようになるか。それには勉強するしかありません。しかも簡単ではありません。でも、パッシブデザインの勉強は楽しいのです。適切な情報源を得て、適切な勉強会に参加すれば、これまでモヤモヤしていたものが「なるほど、こういうことか」と理解できるようになります。「こういう設計をすれば、これくらい暖かくなって涼しくなるのか」ということもわかってきます。そうやって一生懸命に考えた家を提供して「1年を通じて気持ちいい。光熱費もかからない」とお客さまに言ってもらえたらますます楽しくなります。LIXILは以前から「パッシブファースト」というコピーをつくり、「家づくりをするときにはパッシブデザインを最初に考えよう」という思想を広めようとしていますが、これは本当に素晴らしいことであり、私も大賛同しています。これからはそうした思想を実際の技術に落とし込み、お客さまにも喜ばれ、省エネ・省CO2という社会貢献につながる家づくりにどう向かっていくかが問われています。日本中の人が「パッシブファーストで家づくりをするのがいい」と考えるような時代が早く来ることを強く願っています。注目度が高まるパッシブデザインですが、お客さまの関心度も高まっており、今後はますます重要になりそうです。パッシブデザインの第一人者のひとりでもある、住まいと環境社の代表であり、(一社)パッシブデザイン協議会の代表理事でもある野池政宏さまにパッシブデザインの「今」と「これから」をご紹介いただきます。
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|19方をしていると、意味がないという問題もありませんか。近藤社長 軒の出を深くすることで、夏場の日射を遮ることはできますが、やはり方角によっては朝方にどうしても日射が入ってくる場合があります。その場合、すだれなどを設置することで対処できるのですが、こうした暮らし方をお客さまに伝えておく必要はあるでしょうね。LIXILから聞いた﹁図現暮一致﹂という考え方が大事だと考えています。﹁図﹂は図面、﹁現﹂は現場、﹁暮﹂は暮らしの意味です。図面上で考えたものが、現場でしっかりと具現化され、完成後に暮らしが始まってからも、当初想定した通りの性能などが発揮されることを追求するべきなのです。 ﹁図﹂と﹁現﹂を一致させることは比較的簡単かもしれませんが、問題が﹁暮﹂ですね。当社では、﹁暮﹂が一致しているかを確認するために、お客さま宅での実測を始めました。お客さま宅の寝室、脱衣室、リビングにデータロガーというものを設置します。これは、室温などを測定し、自動でデータをクラウド上のサーバーに蓄積する機器です。1年間かけて実測を行い、同時に電気の使用状況なども確認し、〝通信簿〟をお客さまにお渡しするという取り組みをスタートさせました。快適、健康、省エネなどの評価項目ごとに評価をします。また、もっとより快適に暮らすためのアドバイスなども行うようにしています。昆野 工務店さまの中には、パッシブデザインに取り組みたいが、どのように提案すればよいのかが分からないという方もいると思うのですが。近藤社長 当社の場合はまずは室温のシミュレーションから行います。その次に光熱費のシミュレーションを行います。ファーストコンタクトで、室温の大事さやパッシブデザインの基本的な部分を説明し、そのうえで室温シミュレーションをしながらプランを提案していきます。いずれにしても、大切なものは、快適、健康、省エネです。この3つを満たすものがパッシブデザインです。太陽光発電は省エネには貢献しますが、快適や健康には貢献しません。昆野 パッシブデザインに取り組んで良かったですか。近藤社長 当初は手探りでやってみた部分もありましたが、何よりお客さまに満足していただいていることが嬉しいですね。また、自分自身も仕事としてやっていて面白いですし、平均単価もかつての倍くらいになりました。今後もより快適な住宅の提供を目指してパッシブデザインに取り組んでいくつもりです。「PASSIVEFIRST+ZEH」LIXILでは、パッシブファーストの考え方に基づき、ゼロエネルギー住宅をもっと快適に、もっと健康的にするためのアイデアなどを盛り込んだカタログをご用意しています。パッシブファーストの考え方やポイント、さらにはLIXILの対応商品、関連する国の基準や法制度なども紹介しています。パッシブファーストのカタログのご用命は、LIXILの営業担当者までお尋ねください。株式会社LIXILhttp://www.lixil.co.jp/近藤社長(右)とLIXILパッシブファースト推進グループの昆野(左)。パッシブデザインで大事になる「図現暮一致」図面上で考えたものが現場でしっかり具現化され、なおかつ完成後に暮らしが始まってからも、当初想定した通りの性能が発揮させることを目指すことで、「図現暮」が一致する現場暮らし図面

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