パッシブファースト早わかりBOOK 17-18(18-19)

概要

  1. 基礎講座 パッシブファーストの住まいづくり(実践編)
  2. 株式会社 近藤建設興業さま
  1. 18
  2. 17

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18|体の保温性能を向上させ、さまざまなメリットをもたらします。少しの熱で部屋を暖めることができるだけでなく、暖房している部屋と暖房していない部屋の温度差も減少し、快適かつ健康的な住空間を実現します。ただし、闇雲に断熱性能だけを追求してはいけません。ほどほどの断熱が大事ではないかと考えています。と言っても、当社の住宅は省エネ基準で言うと北海道で求められるレベルの断熱性能は備えています。2つ目の要素は日射遮蔽です。庇や軒を上手く活用しながら、夏の暑い日差しを室内に入れないようにします。これによって夏場の室内が暑くなるという現象を抑制するのです。3つ目の要素が通風です。地域の卓越風︵それぞれの季節で最も多く吹く風向きの風︶を考慮し、開口部などの位置を設計することで、室内に涼しい風を取り込みます。また、最上階の上部に﹁高窓﹂を設置し、暖まった空気を効率的に外部に出すだけでなく、下から上へという空気の流れを生み出します。こうした建物の高さを利用した通風の考え方も重要です。さらに、ウィンドキャッチャーなどを活用して、外部の風を室内に取り込みます。昼光利用が4つ目の要素です。例えば、北側の廊下は暗くなってしまいがちです。そのため、一日中照明を使ってしまいます。しかし、昼光を上手く活用する設計を施せば、人工照明に頼る必要はないのです。最後の要素は日射熱利用暖房です。冬場に日射熱を室内に取り入れることで、エネルギーを使用することなく快適に暖房を行う設計技術です。日射熱を取り入れる部分に蓄熱性能を持った素材を使えば、さらに大きな効果を生み出します。こうした要素に配慮しながら、住宅を設計していくことで、快適かつ環境負荷が少ない住宅を実現できます。昆野 パッシブデザインを実践する際に、目指すべき目標値のようなものはあるのでしょうか。近藤社長 当社では断熱性能ではなく、室温を重要視しています。﹁どのくらいの断熱性能にしようか﹂と考えるのではなく、﹁部屋の温度を何℃に保てば快適さや健康を損なわないだろうか﹂と考えるのです。具体的には、冬場でも無暖房で15℃以下にならないことを目指しています。夏場は空調を使わずに35℃を超えないような家にしないといけません。海外では室温が一定の温度以下になると、健康被害をもたらす危険性があるということが言われています。日本でも近畿大学の岩前︵篤︶先生などの研究で室温と健康の関係が分かってきています。室温というのは、快適性だけでなく、居住者の健康維持という点でも重要になるのです。室温を実測しながら﹁図現暮一致﹂を目指す昆野 パッシブデザインの場合、例えば涼しい風が吹いている時に窓を閉め切って冷房を使っているような暮らしパッシブデザインを取り入れ、省エネ、快適、健康を両立する近藤建設興業さまの住宅。写真は「車寄せのある津島京町の家」。中庭と一体的なリビングによって、快適さと心地よさを演出。「図現暮一致」を図るためにデータロガー(写真)を設置し、入居後の室温などを測定しデータを蓄積。そのデータをもとに、より快適な暮らしを実現するためのアドバイスなども行っています。
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|17パッシブデザインに取り組んだきっかけ昆野 近藤建設興業さまのHPを見ると、お施主さま目線のパッシブ住宅を提案されているようですが、パッシブデザインに取り組み始めた経緯をお教えください。近藤社長 ちょうど8年前に﹁高気密・高断熱を実現するような高性能な住宅を建てたい﹂というお客さまと出会いました。当時は一般的な住宅やローコスト住宅などを中心に事業を展開していたので、正直に言うと高性能住宅を手掛けた経験もノウハウもありませんでした。ただ、お客さまを前にして﹁できません﹂とは言えませんから、﹁できます﹂と答えて、色々と情報収集を始めました。そのなかで、LIXILのスーパーウォール工法のことを知り、一番シンプルに高性能住宅を実現できそうだと考え、チャレンジすることにしたのです。昆野 やはり当初は迷われたこともありましたか。近藤社長 そうですね。一般的な住宅に比べると高性能住宅は高価ですからね。それでも地道に高性能住宅の良さを訴え続けた結果、当社で供給する住宅の半分くらいが高性能住宅になりました。そして次の転機を迎えます。高気密・高断熱住宅は、冬暖かくて、夏涼しいというのが売りですが、実際には夏場は暑いことが分かってきたのです。﹁これは何か工夫が必要だな﹂と考えるようになり、さまざまな情報を集めるなかで、パッシブデザインに辿り着きました。もちろん、その前からパッシブデザインのことは知ってはいたのですが、深く勉強をするうちに、﹁これだ﹂と思うようになったのです。さまざまな方々と意見交換も行いました。とくに野池政宏先生にはパッシブデザインのイロハを教えていただきました。まさに師匠のような存在です。パッシブデザインを実現する5つの要素昆野 近藤社長が考えるパッシブデザインとはどういうものなのでしょうか。近藤社長 当社ではパッシブデザインを具体化するうえで、5つの要素をとくに重視しています。まずは断熱です。実は断熱はパッシブデザインでも非常に重要な要素なのです。断熱性能を高めることで建物全省エネだけじゃない!!ZEHネットゼロエネルギーハウスをもっと快適に、もっと健康的にパッシブファーストの住まいづくり 基礎講座︵実践編︶①︻聞き手︼株式会社LIXIL セールスプロモーション部 パッシブファースト推進グループ 昆野麻里子株式会社近藤建設興業さま近藤直岐社長LIXILでは、風と水と太陽の力を最大限に活かし、快適に暮らせる住まいづくりを目指す﹁パッシブファースト﹂を提唱しています。単にエネルギー収支をゼロにするだけのZEHではなく、パッシブデザインの発想を加え、省エネ、快適、健康というすべての要素を満たす住まいづくりを実現することで、顧客満足度の向上にもつながると考えています。そこで、今号から連載企画﹁顧客満足度を上げる家づくり パッシブファースト早わかり﹂と題して、LIXILが考えるパッシブファーストをより具体的に紹介していきます。パッシブファーストの考え方を具現化し、お客さまからも高い信頼を得ている近藤建設興業さまの近藤直岐社長にお話をお聞きしました。パッシブファースト早わかり顧客満足度を上げる家づくり連載企画

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